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[abys0003.txt]修行の地より2004年05/18(火)11:55

『心焦がすは父の面影』




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ゾンビをはじめとする死者が集まるグラストヘイム・カタコンベ。
深淵の騎士は今、カーリッツ候と共に騎士団から赴いてきている。

「シンエンゲンキカ?カーリッツゲンキカ?」
「あぁ、元気だとも。ミミック、お前も元気だね。」


「オマエモナー!オマエモナー!」
 カタコンに入ったところでミミックが出迎えてくれた。
「しかし、お前の主人は一体何用で私などを呼んだのかな?」
「全く、珍しいことでございますな。」

 今日は愛馬から降り、手綱を引きながらゆっくりと歩いている。
「シンエン、コッチ!カーリッツ、コッチ!」



 ミミックを引き連れつつ向かったのはダークイリュージョン卿の自室。

「深淵の騎士、お呼び立てにより参上致しました。」
「待ちわびたぞ。こっちへ。」
 扉の向こうから入室の許可を得る。

「わざわざ私をお呼びとは、如何ほどの用がおありでしょうか?」
「まぁそう急かすな。とりあえずこちらに腰掛けよ。」

 外とはうってかわって随分と小洒落た部屋である。
 内装は落ち着いた色の壁紙で、椅子はアンティークな造りのものである。

「む、カーリッツ殿もご一緒であったか。」
 少し複雑な顔をするイリュージョン卿。

「ほほほ…、どうやら私はお邪魔のようでございますな。
 私めはレイス殿と一局打って参りますよ。」

「面倒をかけて済まぬの。恩に着るぞ。」

 カーリッツ候はミミックと共にイリュージョン卿の自室をあとにした。




「出向いて貰ってすまぬな。本来であればわらわがそちらへ出向かねばならぬものを。
 少々、ここを離れられぬわけがあっての…。」

 いつになく礼儀正しい態度を訝しみながらも、気になったところを問い返す。
「離れられぬわけ?」

「実はの…。あまり大きな声では言えんのじゃが、今、父上がおらぬのじゃ。」
「ダークロード公がおいでない!?」
 聞かされた事実に深淵の騎士の脳裏に嫌な予感がよぎる。

「いや、以前のように行方知らずと言う訳ではないのじゃ。
 明日には帰ってくる予定になっておる。」
「と、言うと、バフォメット公のところですか?」

「いや…、それが…。」
「それが?」
「恥ずかしながら…、人間の町へと出向いておるのじゃ…。」
「人間の町へ!?もしや、またあの時のように?」
 あの時の悪夢が二人の頭に蘇る。

「その通りじゃ…。ただの、今回は多少 話は違うのじゃ。
 わらわが人間の町へ行かぬようきつく言い渡したら、
 泣いていじけて部屋に閉じこもってしまっての…。」
「子供ですか…。」
 深淵の騎士の頭に大きな汗が浮かぶ。

「それでは困るゆえ、週に一度だけ人間の町へ行くことを許したのじゃ。
 父上が出かけている間はわらわが父上の格好で冒険者の前に出ると言うことでの。」
「それでこの場を離れられぬと。」
「そうじゃ。」

「しかし、日を改めてからでも良かったのではないですか?」
「いや…、その…、父上がいない方が都合が良いのじゃ…。」
 急に下に俯いてイリュージョン卿はモジモジとしだした。





「深淵殿!そなたを同じ女として聞きたいことがある!」
 急に大きな声で身を乗り出してくるイリュージョン卿。
「お、女として…??」
 あまりの剣幕と予想外の言葉に深淵の騎士はたじろいで身を引く。

「そ、そなたは、お、男を好きになると言う感情が、わ、分かるか?」
「おおお、男を、すすす好きになるっ!?」
 どもるイリュージョン卿に声がうわずる深淵の騎士。

 誰かがこの部屋にいたら、
 この二人は本当にダークイリュージョンに、
 深淵の騎士なのか?と疑うことだろう。
 それほどまでに二人は…、そう、言うなれば初々しかった。

「残念ながら、私にはちょっと…。」
「そ、そうか…。」
 残念そうに声を落とすイリュージョン卿。

「イリュージョン殿はその…、男を、好きになってしまった、と?」
 深淵の騎士が控えめな口調で質問する。
「その…、なんじゃ…。はっきりとは言えぬのじゃが…。多分…。」
 更にモジモジとし、遂には頬まで染めてしまっている。

「はっきりと分からなかったゆえ、誰かに聞いてみたかったのじゃ…。」
「そのようなことならばジルタス殿にお聞きすれば良かったのでは?」
 深淵の騎士の頭に、鞭を片手に高笑いするジルタスの姿が浮かぶ。

「あのような者に知れたら、グラストヘイム中に知れ渡ってしまう…。」
「なるほど…。」
 色恋沙汰が大好きなジルタス殿。
 これまでそのような話に興味が無かった深淵の騎士には馴染みは薄いが、
 グラストヘイムの恋愛アンテナとまで呼ばれているようだ。

「部下にこのような話をする訳にも行かず、増してや父上に知れようものなら、
 冷やかされるのが目に見えるようじゃ…。」
「やはり、お前も我が子だな」と肩をポンポン叩くダークロード公の姿が思い描かれる。

「それで、私に…。しかし、残念ながら私ではお力になれぬように思います…。」
「そうか…。」
 イリュージョン卿は溜息をついた。



「しかし、イリュージョン卿のお心を射止めたのは一体?」
「……。口外無用じゃぞ…?」
「心得ました。」
「実は、人間のプリーストなのじゃ…。」
「に、人間!?それでは…!?」
「そう…、あそこまで節操が無いわけではないが、父上と同じと言うことじゃ…。」
 そう言って、また俯くイリュージョン卿。

 しかし、それは情けなさのために俯いたのではなく、気恥ずかしさから来たものだ。
 耳まで真っ赤にしてしまっている。

 他の者ならば、これを"恋する乙女"とでも言うだろうが、
 残念ながら深淵の騎士はそのような知識を持ち合わせてはいない。

「この間、いつものように父上について侵入者の排除に当たっていた時じゃ。」
 どうやら馴れ初めを話し出したらしい。
 深淵の騎士はそれに聞き入る。

「女プリーストがテレポートするのを見て、父上もそれを追ってテレポートしてしまってな…。」
「ダ、ダークロード公…。」
 深淵の騎士は呆れ果てて涙が出そうになった。

「わらわはあまりの事に腹が立って、部屋へ帰ろうとしたのじゃ。
 頭に来て熱くなって、いつもの戦闘用の装束を脱いでしまったのじゃ。」
 そう言って髑髏の装飾のマントと顔を覆う髑髏の仮面を指差す。

「そして幸か不幸か、この姿を一人の侵入者に見られてしまったのじゃ。」
 深淵の騎士はその場面を想像して、ちょっと滑稽だと思ってしまった。
「わらわは見られてしまったことと、父上の事で頭に来ていたから、
 そやつで憂さ晴らしをしようとしたのじゃ。」
 その場面も容易に想像出来てしまう。

「装束を脱いでおったから多少の傷は覚悟しておったのじゃが、
 不思議なことにその侵入者は一切反撃せずに、ただ逃げ、ただ耐えるだけだったのじゃ。」
「ほう。それは不思議な。」

「何故じゃ?と思い動きを止めたところでその者は、
 「また必ず会いに来る!」と叫んでテレポートしてしまった。」
「それはますます不思議な。」
「じゃろう?わらわもそう思って色々と考えておったのじゃ。」
 そこでイリュージョン卿は一旦間を置いた。



 深呼吸した後に再び話し始める。
「それから数日して、そやつがまたやって来おったのじゃ。」
 なんだか分からないが胸がドキドキしてきた深淵の騎士。

「そ、それで、その者は?」
「わらわの姿を見つけて一目散に走ってきた。
 そして、「君に会いたかった。」と花束を差し出してきたのじゃ。」
「おぉぉぉ…!?」

 もうこの辺りから、部屋の雰囲気は輪をかけて異様になってきた。
 いじらしく、気になるお相手の事を話しながら俯き加減のイリュージョン卿。
 対して、軽く頬を染めながらドキドキしつつ話に聞き入る深淵の騎士。
 何と言うか、ここは果たして本当にグラストヘイムの一室なのだろうか…?

「そ、それで、イリュージョン卿はなんと!?」
「わらわは「何を戯言を!」と魔法を唱えようとしたのじゃ。
 そうしたら、そやつはもの凄い速さでわらわに近づき…。」
 いつの間にやら身を乗り出して次の言葉を心待ちにしている深淵の騎士。

「気づいたらそやつの胸に抱かれておった…。」
「!!!!」
 更に顔を真っ赤にするイリュージョン卿。
 深淵の騎士はなんだか声を上げそうになったが、
 何と声に出していいか分からなかったので押しとどめ、
 代わりに両手で頬を押さえて驚きを表現した。

「そ、それからというもの、父上のいない週に一度だけ、そやつはわらわに会いに来るの じゃ…。」
「……。」
 深淵の騎士は両手で頬を挟んだまま、あまりの事に固まっている。

「わ、わらわはどうしたらいいんじゃろうか?このような事初めてで勝手が分からぬ…。」
「それは私も同じです。そのような経験など…。」

 二人して真っ赤になってしまった。




「そう言えばダークロード公のいない週に一度と言うと…。」
「そう。今日なのじゃ…。実はついぞ先ほどまで会っておっての。」
 そう言って花瓶に生けられた花束を見つめる。

「わらわは一体どうしたら良いものか…。
 このまま敵である人間にこの身を任せてしまって良いのだろうか…。」
「それは…。」

 再び沈黙が流れる。

「イリュージョン卿はどうしたいとお思いですか?」
「わ、わらわは…。そ、そやつと…、一緒にいたいのじゃ…。」
 先ほどからモジモジしっぱなしのイリュージョン卿。
 いつもの女王様然とした態度はどこへやら。

「一度、人間の町へ会いに行ってみてはどうですか?」
「人間の町に、か?」
「そうです。人間の町へ行って人間の町でのその者の姿を知ることで、
 何か思いつくかもしれません。」
「なるほど…。そうじゃな…。」
 深淵の騎士の提案を聞いて、イリュージョン卿は決意の表情を浮かべる。

「深淵殿、これより留守を頼めぬか?」
「それは構いませんが…、これから参るのですか?」
「こうなっては引っ込みが着かぬ。今から行ってくる。」
「分かりました。ここの守りはお任せ頂きましょう。
 その代わり…、その…、帰ってきたらお話を聞かせてください。」
「わ、分かった。他ならぬそなたの頼みじゃ。戻ったら申し聞かせよう。」


 などと話が盛り上がっているイリュージョン卿の部屋とは別に、
 とあるカタコンの一室でも別の方向で盛り上がっていた。

「ほほほ…、お二人ともお若いことでございます。」
「全くですな。私もあの頃が懐かしい。」
 二人の執事達は、白と黒の駒を互いに動かしながら話題に花を咲かせていた。

「おや、レイス殿も以前の記憶を?」
「そう言うカーリッツ殿も?」

『お互い、』
『懐かしい日々でございますなぁ。』
 二人はかつての自分の姿に思いを馳せた。

「それはそうと、これで如何か?チェックメイト。」
「ぬ!?そ、その手は待ってくださらぬか、カーリッツ殿…?」
「ほほほ、待ったは無しと申したではありませんか、レイス殿?」
「いや、そこをなんとか…。」
 妙に時間の流れがゆっくりとした空間だった。




「うわーっ、なんでカタコンに深淵がー!?」
 何人目かの侵入者を槍で突き倒す。

「さて、イリュージョン殿の首尾はどうなっておるだろうか…?」
「青春でございますな。」
 サーベルを軽く振りながらカーリッツ候が語る。
「青春か…良くは分からんが…。爺、お前にはそう言った経験があるのか?」
「ほほほ…。懐かしきは我が青春の日々でございます。」
 カーリッツ候は楽しそうに目を細めて笑った。



 一方、イリュージョン卿は…。

 以前のアコライトの格好ではダークロード公に会ったときに面倒なので、
 今回はウィザードの格好で、ここプロンテラに来ている。

 胸中の彼は、確か大聖堂で働いていると聞いた。
 身体に宿る魔の力のためか、大聖堂に入ることが叶わなかったため、
 こっそり茂みに隠れて、人の出入りを伺っていた。

 こうして見ると何と多用な人間がいる事か。
 そして自分が如何に人間の女に近いかが良く分かる。

 パチンと何かをはじく音が聞こえた。大聖堂から少し離れたところに
 二人分の人影が見える。

 一人は女プリースト、そしてもう一人は男ウィザード…。

「あ、あれは父上!?」
 頬に手形を浮かべ、そっぽを向いたプリーストの裾に縋りつく。
「あ、トドメさされた…。」
 今度はグーで吹っ飛ばされ、
 男ウィザード、もといダークロード公は茂みの向こうに消え去った。
「ち、父上…。情けない…。」
 思わず父の方に駆け寄ろうとした、その時。



「……ってたよ。」
 聞き覚えのある声。
 今ではその声を聞くだけで頬を軽く染めてしまう。

 あやつだ。
 そう思って振り返った方でイリュージョン卿は衝撃的なものを目にする。

「ごめんなさ〜い、ちょっと言い寄られちゃって〜。」
「ははは、君はかわいいからな。気をつけてくれよ?」

 先ほど父をぶっ飛ばした女プリーストと、
 自分の思い人の男プリーストが腕を組んでいる姿だった。

「な!?あ、あれは…!?」
 思わず飛び出そうとしたが思いとどまり、様子を見ることにした。
 一体どう言うことか?
 あれほど、自分のもとで甘い言葉を囁いていたあやつが…。

 色々な思いが頭を錯綜しているうちに少し時間が経ち、
「ごめん、これから用事があるんだ。」
「そうなんだ〜…。残念。次会うのを楽しみにしてるわ。」
 そう言って女プリーストは男プリーストの頬に軽くキスをして、
 大聖堂の中へと消えていった。

 男プリーストはそれを見届けると、足早に反対の方向へと歩き出した。
 それに気づいて慌てて後を追うイリュージョン卿。
 何とか追い付いて声をかけようと思った矢先、また人影が目に入った。

「やぁ、待ったかい?」
「全然待ってませんよ〜。来てくれてうれしいです。」
 男プリーストの前にいるのはカートを引いた女商人。

「ま、また別の女子…。も、もしや…。」
 イリュージョン卿の心に黒い影が渦巻く。
「ち、父上と同じ…!?」
 やるせない思いにメラメラと沸き起こってくる怒りの炎。



 そうこうしていると早くも二人は手を振って別れている。
 再び相手を見送った後、足早に歩きはじめようとする男プリーストに、

「今度はどちらの女性に会うのですか?」
 とおもむろに背後から声をかける。
「えーと、次はモロクのアサシンさんだったかな。」
 そう言ってメモを取り出す男プリースト。

「わらわの事は遊びじゃったのかっ!?」
「な!?どうしてここに君が!?」
 ようやくイリュージョン卿の正体に気づいて、慌てるプリースト。

「あれほど、わらわに言い寄っておきながら…。」
 イリュージョン卿の全身から魔力の揺らめきが見える。
 あまりの状況に更に慌てるプリースト。

「は、はは…。勘違いしないで。ぼ、僕は君だけさ。
 ほら、こ、これを君にプレゼントしようと思ってたんだ。」
 手渡された包みに、少し気を落ち着かせるイリュージョン卿。

「これは…?」
「君にとても似合うと思ったんだ。」
 ようやくいつものペースを取り戻したと言わんばかりに男プリーストが饒舌になる。
 怒りよりも嬉しさの度合いが勝ちはじめたイリュージョン卿。

 しかし、包みを裏返したところでその熱は一気に冷めた。
 いや、別の熱は燃えあがったわけだが。

 その包みの裏には「to 〜〜」と別の女の名前が書いたシール。

「もう勘弁ならん!消し炭にしてくれるわ!!」

 その日、プロンテラに盛大な隕石の洗礼が浴びせられた。
 だが、不思議な事に被害があったのは大聖堂近くの一角だけであったと言う。




「イ、イリュージョン卿、どうなりましたか?」
 ただならぬ雰囲気で帰ってきたイリュージョン卿に、
 おずおずと事の次第を尋ねる深淵の騎士。

「すまぬが話しとうない。これで我慢してくれりゃ。」
 尋ねる深淵の騎士にイリュージョン卿は包みを手渡し、
「しばらく一人にしてくれ…。」
 そう告げて部屋に閉じこもってしまった。

 包みには荒々しくシールを剥がした跡があった。

 話をしてくれる、と言う約束ではあったがさすがにこれは聞けぬ、
 と深淵の騎士はカーリッツ候と共に早々に騎士団に退散した。


 そして…。

「あ〜、しんえんさま!新しいのつけてる〜!」
「この間、言っていたリボンのヘアバンドですね〜。」
「とってもお似合いですよ。」
「う、うむ。ありがとう。」
 話を聞く事は出来なかったがこれが貰えたから良かったかな、と思う深淵の騎士であった。

「ほほほ…。我が主殿にはまだまだ先の話のようですな。」
 賑やかな深淵の騎士の部屋の前を通りかかったカーリッツ候が楽しげに呟いた。


追記
 翌日、ダークロード公が無事帰還した。
 そして何故か、ダークロード公と共にいるのは、あの男プリースト。

 お互いの趣向とあの時に置かれたお互いの境遇に共感したのか意気投合し
 ダークロード公が客人として招いたのだ。

 そしてイリュージョン卿がその二人を見たときにまた一騒動あったのだが、
 これはまた別のお話…。


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修行中、カタコンより。






[abys0006.txt] ライドワードがテーマだったはずのごった煮SSです 14 2004年06/23(水)18:00

グラストヘイム、騎士団。

グラストヘイム城を守護する騎士達が集うその場所は、
数ある魔物たちの中でも屈強の者たちが集う場所である。

其の中でも、多くの侵入者をその槍でもって薙ぎ払う深淵の騎士は、特に屈強な存在である。
…はず、である。


「むぅ…」
「いかがなされた?どうにも顔色がよろしくないようですが」
 グラストヘイム騎士団、出撃前の戦士たちが詰めるその場所にて。

 額に手を当てて少し顔をしかめた深淵の騎士と、
 その側に控えて心配そうに様子を見守るカーリッツ候。

「いや、大事ない。…ただ、ここ数日急に気温が上がったせいか、どうにも寝苦しくてな…」
「左様でございましたか。その体なれば、睡眠不足は存外影響しますからなぁ」
「うむ、たかが睡眠と侮っておった…一日二日なれば大したこともなかったのだが」

 そういって、疲れたようなあくびを、口元を手で隠して堪える。
 毎日のように繰り返される戦闘の疲れを完全には癒すことができず、
 さすがの深淵の騎士もその体力が大分と消耗されているようだった。

「血騎士団長に申し上げて、休まれてはいかがですかな?」
 側で戦うカーリッツ候は
 その消耗具合を一番わかっているのだろう、心配そうにそう提案する。

「いや、そうもいくまい。戦力は不足はしておらぬが過剰とも言えぬ。
 私一人が体調管理を失敗したからといって抜けるわけにもいかん。
 …それに、今日は1階の巡回だ、そう心配そうな顔をするな」

 顔色の悪さはさすがに隠しきれぬものの、
 凛とした表情でそう言い切る様子はいつもの深淵の騎士。

 それを見れば、いかなカーリッツ候と言えどもそれ以上引き止めることもできなかった。
「…」
「ん?ああ、ライドワードか、今日はよろしく頼むぞ」
 いつのまにか側に来て宙に浮いていた一冊の本を見て、深淵の騎士は微笑みかける。

 ライドワード、本の形をした魔物。
 冒険者へと向かって凶悪な牙を剥き襲い掛かるはずのそれは、
 忙しなく深淵の騎士の周囲を飛んでいた。

「…、…」
「お前まで心配してくれるのか…しかし、本当に大丈夫だ。」

 人では聞き取りにくい言葉で
 しゃべっているらしいライドワードへと手を伸ばし、その表紙を撫でたりしながら、
 いつもの張りのある声で声をかける。

 撫でられて嬉しいやら、やはり心配やら、騎士の手に体を擦り付けるようにしながらも
 今度は動きを止めてじ〜っとまっすぐ。多分、見つめているのだろう。

「そういえば、お前と一緒に戦うのは久しぶりだな、私の修練の成果を見せてやろう」
 ことさらに、大丈夫だと示すかのよう腕を曲げて力瘤を作る真似事などをしてみせる。

と、そんな戦いの前の一時も、けたたましい鎧の音で遮られた。

「ガーゴイル部隊より報告、侵入者あり!」
 そう報告するレイドリックの声を聞くなり、深淵の騎士の顔が戦士のそれになる。
「来たか…カーリッツ候、参るぞ!」
「御意!」

 すぐさま出撃していく二人を見送るかのよう、ライドワードはしばらくそこにあった。
 が、すぐに宙を飛び、二人へと追いつき、戦場へと向かって行ったのだった。


『L-1ヨリ各員ヘ。
 マスター、コンディションイエロート判断。作戦コードAM07ノ発令ヲ要請スル』

『L-2、了承』
『L-3、了承』
『L-4、了承』
『L-5、了承』

『各員ノ了承ニ感謝スル。予測サレル遭遇地点、ナラビニ時刻ハ…』


「やれやれ、運というやつは、悪い時はとことん悪いらしい」
 侵入者を発見した深淵の騎士は、愚痴にも似た口調で傍らのカーリッツ候へと語りかけた。
 見れば、侵入者はどうにも手練のよう、先に迎撃に向かった者たちも返り討ちにあっていた。

「…いかがなさいます」
「ふん、決まっておろう」

 体調が万全な状態であればまだしも、今の状態では荷が重い相手、だとは見て取れた。
 だが、それを理由に背を向けられるような騎士ではない。

「御意、露払いはお任せを」
 それをわかっているカーリッツ候の声にもまた、迷いはなく。
 侵入者へと向かって一歩を踏み出した、その時だった。

「…」
「え?」
 振り返った深淵の騎士の側を、高速で飛び去っていく何か。

「なっ、ライドワード、出すぎだ!」
 そう、わずかばかり遅れていたライドワードが、二人を追い越して一気に飛び掛ったのだ。
 それを見た侵入者たちも直ぐに戦闘態勢に入る。

「弱ってる深淵がいてラッキーって思ったのに邪魔すんな!!」
「ライドワードなんてさっさとやっちまおうぜ」

 勝手なことを口々に言いながら、
 前衛の騎士がライドワードを食い止め、
 残りのものが散開して追撃しようとした、のだが。

「うわっ、ライドの横沸き?!」

 魔法の詠唱を始めた魔法使いのすぐ沸きに、忽然と現れるもう一体のライドワード。
 噛み付かれてはかなわじと、慌てて逃げ出す魔法使い、そのフォローに走る司祭。
「ちっ、こうなったらDSで速攻…うわっ?!」

 混乱する侵入者へと、さらに新たなライドワードが襲い掛かる。


『L-1ヨリ各員ヘ 作戦ヲ第二段階ヘ移行。

 L-3、スイッチシテ左翼ヘ回リコメ。
 L-5、ヘルプニ入レ。
 L-2、ソノ場デ待機、抑エコメ。
 L-4、フォロー』

『L3、了解。敵魔法使イヲ追撃スル。L-5、ソチラハ任セタ』
『L5、了解。ローグハ回避不十分。問題ナシ』
『L2ヨリL4ヘ司祭ノ装甲ハ硬イ。二人ガカリデ削リ、余裕ヲ奪ウ』
『L4、了解。L1ノ状況次第デハ アチラヘ』

「な、なんだってんだこいつら!いきなり来ただけじゃなくて動きがうざい!」

 不意打ちに混乱し、互いにばらばらに動いていた侵入者を、
 ライドワードたちは統制の取れた動きで追回し、
 ろくな反撃を許さないままに包囲していく。

「ちっ、やってらんねぇ!」
 侵入者の一人、ローグはそういうとふっと姿を消した。

 トンネルドライブ、と呼ばれる特殊な技術によってその場から逃げ出そうというのだろう。
 いかな優秀な狩人たるライドワードも、姿を隠したローグを見つけることはできない。
 包囲から抜け出したローグが気を抜いた瞬間、だった。

「チャージアロー!!」
「ぐはぁっ!!」
 駆けつけたレイドリックアーチャーの一矢が、
 強烈な衝撃でもってローグを襲い、包囲網の中へと押し戻す。

「流石だな、弓の」
「うむ、我の目は誤魔化せぬ。後は任せるぞ、剣の」

「了解だ、前に立つは我の仕事」
 続いてレイドリックが斬りかかり、
 ローグは防戦一方となって逃げる隙を見出すこともできない。

「くっ、ばか、固まるな!固まったら…っ?!!」
 そして、彼は見た。自分の間近に立つ、漆黒の騎士の姿を。

「案ずるな。貴様らが無力だったのではない。彼らが上だったのだ。
 もっとも、この地に踏み込んだ愚かさはどうしようもないが、な」
「まったくでございますな」

 ゆらり、と騎士の、カーリッツ候の剣が振りかぶられて
「グリムトゥース!!」
 魔の力を持った岩の牙が包囲された侵入者の動きを完全に止めて
「ブランディッシュスピア!!」
 爆音とともに放たれた閃光は、侵入者たちを纏めて薙ぎ払ったのだった。


「諸君、見事な戦いぶりだった。
 難敵を速やかに排除できたのは、諸君の健闘のおかげである」
 戦闘終了後、剣を収めながら深淵の騎士はねぎらいの言葉を紡いだ。

「ほっほっほ、まことにございましたなぁ。老骨の出番など皆無に等しく」
 カーリッツ候も甚く満足したらしく、好々爺の笑みで頷いている。

「はっはっは、騎士殿ご覧になられましたか」
「我ら兄弟、本気を出せばこんなもの」

 さあ褒めてくださいとばかりに
 ずずいと前に出たレイドリック兄弟をあっさりとスルーして、
 深淵の騎士はライドワードたちの側へと。

「今日の殊勲はお前たちだな。
 私の腕を見せてやるつもりだったのに、逆に見せつけられてしまった」

 微塵の悔しさもない、晴れ晴れとした笑顔でそう言いながら、
 ライドワードたちの表紙を撫でていく。

「…」
 褒められているのがわかっているのか、
 ふよんふよんと浮き沈みしながら左右に揺れるライドワード。

「何を照れることがある、本当に見事だった。誇るべきことだぞ?」
 人間の目には不可解なライドワードの仕草も、彼女には伝わっているらしい。

 それでもまだ揺れているライドワードたちに、くすくすと笑いながら

「今日は念入りにはたきをかけてくれるよう、アリスに頼んでおかねばな」
「…!…!」

 途端、大きく上下に揺れるライドたち。
 ふよんふよんぱさぱさ、ぱったぱった。

 本好きが見たら卒倒しそうな勢いでページを繰り、表紙を閉じては開いて。
「本当にお前たちははたきをかけられるのが好きだね」
 そんな光景を見つめる深淵の騎士の表情はどこまでも柔らかかった。

「ところで騎士殿、我らは」
「こら、抜け駆けするな弓の!」

 やいのやいのといつものペースに戻った二人へと、ちらりとだけ視線を向けて
「…まあ、当然の仕事をしただけ、とも言えるが…
 確かにお前達が来なければ、一人取り逃がすところだったな。助かった」

 まともに褒めるのは慣れていないせいか、
 そっぽを向いて頬をかきながらの深淵の言葉。
 それまでやかましかった二人が動きを止める。

「なあ剣の」
「なんだ弓の」

「ついにやったな」
「ああそうだな。ついに我ら、戦士としてお褒めの言葉が頂けたな」

「これも、剣のがローグを逃がさなかったおかげ」
「いや、弓のが見事押し返したおかげ」
「「流石だよな俺ら!」」

 恐らく、生身の体があれば滂沱と目の幅涙を流していそうな雰囲気の中、
 ガッツポーズを華麗に決めた二人は輝いていた。

「こら、浸っている暇はないぞ。巡回はまだ続くのだからな」
 そんな二人を置いて、深淵の騎士達はすでに移動を始めていたりしたのだけれど。



『L-1より各員へ
 マスターノ巡回終了ニツキ、現時刻ヲモッテ作戦コードAM07ノ終了ヲ宣言。
 通常配備ヘト戻ラレタシ。
 各員ノ協力ト健闘ニ感謝スル』

『L-2、了解』
『L-3、了解』
『L-4、了解』
『L-5、了解』


「それにしても、今日のライドワードたちは本当に強かった。
 私もうかうかとはしておれんな…もっと鍛えねば」
 一日の戦いも終わり、身を清めて。
 ベッドへとその身を横たえながら、小さく深淵の騎士がつぶやく。

「今日も蒸し暑い夜になりそうだが…
 さっぱりしているうちに寝てしまおう」

 灯りを消して、目を閉じれば、疲れもあってか程なくして眠りへと落ちていく。

 しかし、数刻ほどたち、
 夜半ともなればやはり寝苦しくなってきたか、寝返りが多くなってきた。
 と、他に誰もいないはずの寝室で何かが動いた。

 それはふよふよと音を立てずに浮揚して宙を漂い、深淵の騎士の頭上へと。
 ついで、ふぁさ、ふぁさ、と鳥の羽音のような音とともに生まれる柔らかな風。

「ん…」
 それまで歪んでいた彼女の顔が穏やかなものになり、
 寝息もゆっくりとしたものへと変わっていく。
 満足して頷いたかのようにふよん、と影が揺れた。

『L-1ヨリ各員ヘ
 夏季限定新規作戦コードAM-s1ヲ提案スル。
 コノ作戦ハ基本的ニ単独デ任務ニツクタメ、
 各員ノ協力ナラビニ、ローテーション作成ガ必要トナル概要ハ…』




「おはようございます、アビスさん」
「ああ、おはようアリス。今日もいい天気だな」

 翌朝。朝の掃除をしていたアリスが
 深淵の騎士に気づいてにこやかな笑顔を向ける。

 こちらも機嫌よく、笑みなど零しながら軽く手を振ると、
 ほっとアリスが吐息を零し、肩を落とした。

「ん?どうした、アリス」
「いえ、ここのところお疲れのようでしたけど、
 今日は随分とさっぱりなさってるものですから」

 この少女にも心配をかけていたのかと思うと、
 今更ながらに情けないやら恥ずかしいやらで僅かに頬を紅くしながら
「すまない、心配をかけた。昨日はどうしたわけかぐっすりと眠れてな」

 深淵の騎士はそう言って力瘤を作るかのよう、腕を曲げて見せた。
 昨日のような虚勢ではなく。
「まあ、それは大変よろしゅうございました。

 やっぱりアビスさんがお元気でないと、寂しいですもの」
 邪心のない直球かつ朗らかな笑顔を見ると
 吊られて深淵の騎士も笑顔になってしまう。

「からかわないでくれ、アリス。
 …ああ、そうだ、そういえばアリスに話したいことがあったのだ」
「はい?なんでしょう?」
 そう言って小首を傾げるアリス、しかし深淵の騎士はすぐには口を開かない。

 焦らすように、笑い出すのを堪えるかのようにしながらの、沈黙の数秒。
「夢の話を聞きたいと言っていただろう?
 昨晩も夢を見たんだ。それがおかしな夢でな」
「まあ、どんな夢ですの?」

 夢、と聞いた途端、掃除の手を止め、
 ぱたぱたと小走りに深淵の騎士へと歩み寄るアリス。
 その素直な反応に、ついに堪えきれなくなったのか
 口元に手を当てて笑いながら

「本当におかしな夢なんだ。夢の中で私はライドワードの上に乗っていてね。
 連れられるままに風を切って空を飛び、あちこちを駆け巡っていた。
 不思議な、それでいて気持ちのいい夢だった…」

 ゆっくりと、夢を思い出しながら、再び味わいながら。
 静かに紡がれていく言葉に
 しばらく聞き入っていたアリスは、ほぉ、とため息を零した。

「素敵ですね…ますます、私も夢を見たくなってきました…」
「ああいう夢なら、私も何度でも見たい、かな…

 ああ、夢でなくても、ライドワードたちに一斉に飛んでもらったら浮かべるかもな?」
「まあまあ、危ないですよ?…でも、きっと空から見る景色は素敵でしょうね…
 空から見た地上の景色はいかがでした?」
 その言葉に、はた、と深淵の騎士の動きが止まる。

 しばらく、なにやら考え込んでいた。
「すまない、実は地上は見なかったんだ…いや、見たのかも知れない、けれど。
 空の蒼さしか覚えていない…」

 申し訳なさそうにそう告げている、はずなのに。
 どこかまだ、夢の中にいるようなその表情に、逆に、アリスは嬉しそうに首を振った。

「いいえ、いいえ。きっとまた空を飛ぶ夢は見れて、其の時に地上は見れますから。
 それよりも、そんなに素敵な蒼さだったのですか?」
「え、あ、ああ、そう、だな。うん、あれは不思議な深さの蒼だった…
 夢の中とはいえ、あれを見せてくれたライドワードには感謝しないとな。
 アリス、はたきかけをいつもより念入りにお願いできるか?」
「はい、それはもう、喜んで。
 そうしたら、私も空へ連れていってくれるかも知れませんしね」

 早朝のグラストヘイムに、少女たちの楽しげな声が響く。
 夢語りは、いつまでもいつまでも終わることのないかのよう。

 グラストヘイム、闇に最も近き城。
 その城を守護する、漆黒の甲冑に身を包んだ騎士は誰もが知るところ。
 しかし、その少女の夢を守るものがいることは、誰も、知らない。

-fin-







 そしてやっぱり後日談

「…」
「おお、ライドワード殿、先日はご活躍でしたな」
「ほう、騎士殿には褒められ、アリス殿のはたきはさらに念入りに、ですか」
「それはなんとも羨ましいこと、我とてアリス殿に叩かれてみたく」
「まて弓の、その話は少々アブノーマルだ」
「すまんな、剣の。先日のお褒めの言葉に浮かれておるようだ」
「気持ちはわかる。我とてあのお言葉を思い出しては萌え狂うところであった」
「…、…」
「む?いやいや、礼など」
「他のライドワード殿たちも喜んでおられたか。それは何より」

「うむ、我らも知恵を授けた甲斐があったというもの」
「然り、作戦コードによって
 動きを統制することであそこまで力を発揮なさるとは」
「「流石だよなライドワード殿」」
「…」
「ああ、これは言葉遊びのようなものでしてな」
「左様、あまり気になさるな」
「…、…?」
「気になるといえば、作戦コードのこと?」
「おお、そういえばAMの意味を教えてませんでしたな。AMとはですな」
「アビスたん萌え萌えの略でして」
「僕のアビスたんを守っての略でして」
「…」
「…」
「…」
(さあ、どれが誰の…でしょう)

「何が萌え萌えだ弓の!
 貴様の頭にはそれしかないのか、卑しくも作戦行動中だぞ!」
「何を言うか剣の!貴様こそ、守ってだのなんだの、
 肉壁の発想がぷんぷんしておるわ!」
「ふん、その肉壁がなければ即座に粉砕されるガラクタがよく言う!」
「貴様こそ、我がいなければ盗人一人捕まえられぬボンクラではないか!」
「…!…!」

「申し訳ないが、黙っていていただこう、ライドワード殿」
「うむ、これは我らの問題ゆえ」
「ならば、我が剣と誇りと萌えをかけて」
「我が弓と意地と萌えをかけて」
「「いざ尋常に!」」
「…!!」
「…貴様らの相手は、まとめて私がしてやろう」
「…OK、お約束だな、剣の」
「…うむ、そして死ぬ時は一緒だな、弓の」
「「我が萌えに一片の悔いなs」」
「ブランディッシュスピアーーー!!!!」
…そして、やっぱりアリスの仕事は普段の三倍になってしまったとか。
申し訳なくてお手伝いをしている深淵の騎士とライドワードがいたとか。






[abys0007.txt] なんつーかなんつーかごめんなさい。 12 2004年07/03(土)03:19


ここはグラストヘイム騎士団。その中心にある円卓にはいつもの二人が座っている。
と、そこへさらに一人、深淵の騎士が現れる。
「うはwwwwwww巡回wwww終了www異常ナシwwwwww」
「うむ、ご苦労。」
二人がいる円卓に、現れた深淵の内藤も席に着く。

「では30分後には私だな。」
「うはwwwwwその通りwwwっうぇ」
「なぁ、騎士子たんよ。」
「む、なんだ。」

 騎士子たん。と呼ばれて顔を向ける。しかしその顔はしかめっ面だった。
 剣を取り返すために不承不承頷いたとはいえ、やはり嫌なものは嫌である。

「わざわざ巡回する必要がないと思うのだが
・・人間共が来ればライドワードが知らせるのだ。
 それから出向いて我らで蹴散らせばよかろう?」

「ふむ。珍しくまともなこと言うな。だが、そういうわけにはいかんのだ」
「それは何故だ?」
「よいか、ライドワードが知らせてくれるとはいえ、やはりソコに行くまでには時間がかかる」
「その通りだな」
「うはwwwww馬達wwwwのんびり歩くからwwwwwっうぇ」
「私達が冒険者達に会う頃にはある程度の被害があるかもしれん」

「まぁ・・レイド達は損傷するかもしれんな。
 だが・・レイド達の傷はエルニウムで直せるだろう?」
「うはwwww便利杉wwwwww」
「それが問題なのだ。ただでさえどこぞの馬鹿兄弟が浪費しているというのに、
 これ以上エルニウムの消費を増やすわけにはいかん。」

「むぅ・・しかし少しくらい増えたところで変わらんのではないか?」
「少し?その少しが命とりなのだ深淵。コレを見ろ。」
 騎士子たんが円卓にツイと指を滑らせる。
 すると円卓に緑色の文字が浮かぶ。

「ほぅ・・・便利だな。」
「うはwwww光ったwwww光ったwwww」
「だろう。魔力を通すだけで意図した文字が浮かぶのだ。」
「して、どこの通販だ?」
「うむ、バフォメット田中の・・ゲフッゲフッ・・話を戻そう。
 こちらがエルニウムの供給量。そしてこちらが消費量だ。」
 騎士子たんの言葉に合わせてそれぞれ数字が光る。
「1つも余ってないな。」
「うはwwwwwプラスマイナス0wwwwwおkkkkkk」

「巡回してる今でさえこうなのだ。
 これで巡回を止めてみろ。消費量が供給量を上回り──」
「結果レイド達の戦力低下になるわけか・・」
「うはwwwwwwwwww」

「それだけではない、私達のこの鎧の修復もエルニウムだし、
 爺達カーリッツもエルニウムで傷を修復するのだ。」
「むぅ・・・・」
「分かったか。これが毎度巡回している理由だ。」
 ハァ、とため息をつく騎士子たん。
「なら騎士子たんよ、自然産出量で足りないのなら、買えばいいではないか。」
「どこから買うのだ、どこから。
 そもそも我らに金という共通概念はあるまい。

 あるのは等価交換だけ、
 それではエルニウムは増えるかもしれんが、別の場所に歪が生じるぞ。」

「誰が仲間から買うと言った。
 人間の街の露店にはエルニウムなんぞ溢れてるではないか。」

「な・・・!人間から買う・・だと!?」
「うはwwwwwwwwwww」
「馬鹿な!街に降りてみろ。たちまち人間共に囲まれるぞ」
「うはwww
 流石の俺様でもwwwww大人数はwwwwキツイかもwww」

 騎士子たん達の反応を見てフゥーと大げさに肩をすくめる深淵。

「まったく・・自分が受肉していることを忘れたか?
 人間の衣装を着れば見分けなどつかないだろう?」
「あ・・・なるほど・・。」
「深淵wwww頭良杉wwwwwww」
「フフ・・何を今更・・」

「しかし、私達は人間の使う硬貨など持っていないではないか。」
「ふむ、確かに持っていないな。
 だが、持っていないなら、稼げばいいではないか。」

「稼ぐ?」
「っうぇ?」
「人間達の間では臨時公平なるものがある。
 それに参加すれば、金などいくらでも稼げる。」
「なるほど・・その手があったか・・。」
「っうぇ?っうぇ?」
 納得する騎士子たんと、?マークを浮かべる内藤。

「では、早速行こうか。」
 バッ!とマントを脱ぐ深淵。
 その下には既に人間の騎士の衣装が着込まれている。

「しかし、私達が留守の間はどうするのだ?」
「む・・・そういえば・・」
「うはwwwwwww本末転倒wwwwっうぇ」

 はぁー、とこれ見よがしにため息をつく騎士子たん。
 それを見て焦るように、

「そ、そうだ、イリュージョンに頼めばよいではないか。
 この間留守にしたときに代わりにカタコンベを守ってやったのだろう?」
「む・・そういえば・・」

「そうと決まればカタコンベに行くぞ。」
「うはwwwwカタコンwwwカタコンwwww」
「あっ、待たんか!」
 先に席を立ってカタコンへ向かう二人を早足で追いかける。


──カタコンベ──

「──というわけなのだ。協力してもらえるか?」
「むぅ・・そうじゃのう、この間は世話になったし、
 いなくなった部下を探すのも上司の勤め・・」

 顎に手を当ててコクコクしているイリュージョン。
 彼女には
『行方不明になったレイド達を探すために外出するので留守を頼む』という説明をした。
 もちろん嘘である。

 だが、人間の敵であるという共通点を持つ仲間に
「人間に混ざって臨公で稼いでくるわ。」などとは口が裂けても言えない。

「よし、騎士団の留守はわらわに任せるがよい。お前達はレイドを探すのに専念せい。」
「おぉ、うけてくれるかイリュージョン殿。」
「うはwwwイリューwwww優し杉www修正されないねwwww」
「うむ、では頼んだぞ。」
「任せておけ」

こうして騎士子たん一向は街へと向かった。


──プロンテラ南──

「ここにwwww西京の俺様ことwwww深淵の内藤wwww後輪wwww」
「ふむ、ここに来るのも久しぶりだな・・・」
「・・・・・。」

ここ、臨公広場と呼ばれる場所に、騎士子たん3人はいた。
「さて、どこに入るか・・」
「うはwwwいっぱいあり杉wwww修正されるねwwww」

「言っておくが、グラストヘイム行きには入るでないぞ。
 仲間からの戦利品で稼ぐなど言語道断だ。」
「わかっとる。」
「おkkkkkk」

 騎士子たんの忠告もそこそこに広場の中心へと向かっていく二人。
「む?見ろ、騎士子たん。ここなど丁度良いのではないか?」

 深淵が指を指した先には『臨)65-75廃屋行き。前衛募集』とある。
「ふむ。我らにレベルの概念がないからいいとして、前衛募集とは丁度いいな。」
「だろう?」
「おkkkkww突入wwwwww」
「待てというに!」
「ふむ」


------------------------------

 深淵の内藤さんが入室しました。
 深淵の騎士子たんが入室しました。
 深淵の騎士さんが入室しました。

「こんwwえーとwwww75のww騎士ですww」
「ふむ。同じく。」
「・・・右に同じ。」

「ぬぉw」
「3人も来たww」
「深淵ファミリーキター」

「流石に前衛4人じゃ多いような・・。他にクルセさんもいるし。」

(・・おい、深淵。)
(む?なんだ騎士子たん。)

(流石にこれは多すぎだろう。他にも一人いるようだぞ。)
(む、そうか。では抜けるか?)
(たしかにそうしたいが・・・入った以上抜けるのもまた・・)
(ふむ。なら内藤に任せるか。)
(内藤に?大丈夫か?)
(奴もある程度の常識はある・・・ハズだ。
 それよりももっと稼げる方法を思いついた。
 それには騎士子たんの協力が必要なのだ。)
(むぅ。なら内藤に任せるか。)
(うむ。)

「ふむ。流石に多かったようだな。
 ここは内藤に任せようか、騎士子たん。」

「そうだな。内藤。私達はここで待ってるから行って来い。」
「っうぇ?」

「すいません騎士さん、騎士子さん^^:」
「なに、気に病むことはない。それでは内藤、任せたぞ。」
「おkkkkkkk」

深淵の騎士さんが退室しました。
深淵の騎士子たんが退室しました。

「では内藤さん、よろしく^^」
「うはwwwwよろwwwwww」
「よろしくー」
「よろー」
「よろぉぉぉ」

------------------------------

「で、そのもっと稼げる方法とはなんなのだ?」
「ふむ、それはな・・」
「それは?」
「人間の男に貢がせるのだ。」
「はぁ?」

「思うに、騎士子たんは萌えの塊だ。それにひっかからない男などいない。」
「ちょっと待て!その・・お、男を引っ掛けるなど・・私は・・」
「案ずるな。騎士子たんは俺が言うセリフを喋ればいいのだ。」
「・・本当か?本当にそれだけか?」
「うむ。」
「むぅ・・」
「何をしている。悩んでいる暇などないぞ。すぐにでもチャットを立てるのだ。」
「むぅー。」
 ・
 ・
 ・
『どなたか一緒にお話しませんか?(0/2)』
(・・騎士子たん。人数が0/2になっているぞ。)
(し、しかたないだろう!いつもこうなのだ!)
(む・・・どうにかならんのか・・)

------------------------------
深淵の騎士さんが入室しました。
「見ろ、騎士子たん。1/2になったぞ。」
「私達は0.5扱いか・・・」

「まぁ魔族だからな。仕方あるまい。それより、これで準備は整ったな。」
「う、うむ・・。」

「む、早速来たぞ。あれは・・ウィザードだな。それも結構な金持ちと見た。」
「そんなことまで分かるのか貴様は・・・」
「あの装備なら誰でも思うだろう。あれはオシリス殿の王冠ではないか。」
「む、そういえば・・」

DLTUEEさんが入室しました。

「こ、こんにちわ騎士子たん(*゚∀゚)ハァハァ」

(なにやら既に危ないな。)
(本当に大丈夫か?)
(安心しろ。とりあえず「こんにちわー」と挨拶だ。)
(わ、わかった)

「こ、こんニちワ・・」

(発音がおかしいぞ。)
(う、うるさい!)

「さ、さぁ騎士子たん。早速だけどあんな話やこんな話を(*゚∀゚)ハァハァ」

(もう一度聞く、大丈夫か?)
(さぁな。)
(さぁなとはなんだ!)
(ここまで危ない奴が来るとは思わなかったのだ。)
(ぬぅ)
(それよりまず「そんなことよりまずお互いのことよく知らないと・・ね?」だ)
(そ、その様な事を言えというのか!)
(当たり前だ)
(断る!断るぞ!)
(フ・・断るのはいいが。その後どうする気だ?まさか内藤一人に働かせる気か?)
(ぐっ・・・)

「あれー?騎士子たんどうしたのかなー?
 は、はやくあんな話やこんな話を・・(*゚∀゚)=3フンスフンス」

(さぁ、覚悟を決めるのだ!)
(ぐ・・ぬぅ・・覚えておけ!)

「そ、そんなコトヨリ・・
 ま、まずお互いの・・コと・・知らナいト・・」

「アハァー(*'∀`)騎士子たん顔真っ赤だよ。
 でもそうだね。まずはお互いのイロンナ事知らないとねぇ。」

「僕はDLTUEE。
 フフ・・でもこれは世を忍ぶ仮の姿。
 僕の正体はなにを隠そう!カタコンベの貴公子。ダークロード様なのだ!」

(・・・・・)
(・・・・・)
(・・・・いいか?)
(うむ、任せとけ。・・ただ、搾り取るのを忘れるなよ。)

「ウフフゥー・・。驚いて言葉も出ないかい?騎士子たん(´¬`)」
「カタコンベの貴公子・・ですか・・・。」

「うん!そう!僕とあんな事やこんな事すれば一生遊んで暮らせるよ!」
「そうですか・・じゃあちょっと向こうの人気のないところで・・」

「えぇ!外でやるなんて騎士子たん大胆なんだね・・(*゚∀゚)=3」

深淵の騎士子たんが退室しました。
DLTUEEさんが退室しました。

------------------------------

「ここらへんで・・・」
「ハァハァ・・騎士子たん。は、はやくやろうよ・・(*゚∀゚)」

「その前に・・一生遊んで暮らせるんですよね?その証拠、見せて下さい。」
「う、うん!
 えーと・・ホラッ!
 このクラウンとか魔剣とかエルニウムとか色々
 ・・全部騎士子たんのだよっ!」

「そうですか・・では・・・」
 騎士子たんが服に手をかけ、バッと勢いよく脱ぎ捨てる。
「おぉ!・・・・ぉ?」

 が、そこから出てきたのは黒い深淵の衣装だった。
 そして何時の間にかその横にももう一人深淵が。

「えー、あー、うー・・その、深淵さん?」
「そうですよ。カタコンベの貴公子、ダークロード様。」
 騎士子たんがニッコリ微笑む。

「あ、あの、さ・・・イ、イリューには内緒にして。ね?」
「さぁ、どうしましょうか。」
 騎士子たんはまだ笑顔を崩さない。

「たっ、頼むよ深淵さん!こんな事やってるの知られたら・・・」
「ヒドイ目に遭うでしょうね。」
「でっ!でしょ!でしょ!?だ、だから内緒にして・・ねっ!?ねっ!?」
 必死になっているダークロードを尻目に、深淵が虚空を眺めながら言う。

「そういえば、我らが騎士団はいまエルニウム不足でしてね・・」
「!!わ、わかった!あげるから!エルニム全部あげるから!だから内緒にして!」

「ふむ。ではこれにサインを。」
「おkおkおk!!」

「これで契約は完了しました。ありがとうございますダークロード様。」
「い、いやいやいや。そ、そうでもないよ!!」
「イリューには伝えませんのでご安心してください。」
「そ、そう?よかったぁー、見つかったらどんな目に遭うか・・。」

「ただし、彼女もコチラに来てるので、会うかもしれませんがね。」
「えぇ!コッチ来てるの!?」
「その通りじゃ、父上。」

 ビクッ!とダークロードがひときわ大きく震える、
 そしてギギギ・・という擬音が出そうなほど
 ゆっくりと振り向く。そこにはアコの姿をしたイリューが。
「あ・・・アハハハハハ・・・」
「うふふふふふふふふ」

その後、プロンテラ南の人気のない一角で、凄惨な悲鳴が響いた。


その後。

「む、帰ってきたか内藤。」
「うむ、ご苦労であった。」
「うはwwww400k稼いだwwwエル買えるねwww」
「その事なんだがな、内藤。実はもうエルニウムの心配はしなくても良くなったのだ。」
「っうぇ?」

「だから、その金は内藤が好きなように使うがいい。」
「うはwwwwwじゃあwwww何か買ってくるwwっうぇ」
「うむ。私達は先に戻っているぞ」
「おkkkkkk」

 その後、内藤が買ってきたのはエルニウムだったとさ。

「うはwwww多いことにwwwwこしたことはないwwwwwっうぇ」
「「内藤・・・」」

                    完








おおおお前ら!なんつーかなんつーか、ごめんなさいっ!
もう何かすごいことになっちゃってごめんなさいっ!
電波が悪いんです!電波!

あと何かさっき書いた奴なんか深淵の内藤が深淵の逆毛とかなっててもうdmp
書きにくかったらこんなアホいの無視しちゃっていいですからね!

あとなんか騎士子たんと深淵が分かりづらくてもっかいごめんなさいっ
いやなんか最後なんて色々混ざって強引に止めましたよ(´・ω・`)モウネ・・・






856 :855は人がいるかどうかの布石だったんだよ!旧up板・投下報告:04/07/03 12:20 ID:EOdhm1+/
[abys008.txt] 旧ロダの008です(キャッシュより復旧by中の人 4kB 2004/07/13(Tue)11:17

ここはグラストイヘイム騎士団。その中心の円卓には、いつもの二人が席に着いている。

「なぁ騎士子たんよ。」
「なんだ深淵。」

「人間の格好はしないのか?」
「・・・は?」

「だから人間の格好はしないのかと聞いているのだが。
 先日街に降りた時も人間に全くバレなかったのだしな。」

「・・・まぁ、確かに私達は受肉してるのだから人間の格好をすれば見分けはつかん。
 だがここならそのようなことをする必要はあるまい。」

「違うのだよ騎士子たんよ。ここだからするべきなのだ。」
「それは何故だ?」

「ふむ、いいか騎士子たん。人間達の前に我らが姿を現せばどうなる?」
「人間共は襲い掛かってくるだろうな。」

「うむ。だが騎士子たんよ、人間達の前に人間が現れても襲われるか?」
「それはあるまい。なにせ人間どもは・・・!!」

「そう、それなのだ騎士子たんよ。
 我らが人間の格好をしていれば、全く気づかれずに近づけるではないか。」
「確かにそうだが・・流石にずっと人間の格好というのも・・・。」

「ふむ、ずっとは嫌か。ならばこうしよう、我らも受肉しているのだから3人で交代で変装するのだ。」
「む、交代か・・。」

「うむ。それに騎士子たんはペコペコを持っているだろう?」
「知ってたのか?」

「夜中にクエーッなどと大絶叫されては誰でも気づく。
 まぁそんなことより、ペコペコは我らが乗る馬よりも速い。
 が、だからといってこのままでペコペコに乗るのもいささか格好がつかん。」
「そのための人間の格好でもあるわけか。」

「その通りだ。緊急時に素早く移動できて、被害も抑えられる。まさに一石二鳥だろう。」
「む・・確かに。」

「分かったか。では善は急げ、だ。早速着替えるのだ騎士子たん。」
「何故私なのだ。提案したお前がすればよかろう。」

「む。嫌か騎士子たん。」
「嫌というよりこのまま私がやったら交代制がうやむやにされそうだからな。」

「しかしペコペコに乗れるのは騎士子たんだけだぞ?」
「私は特別な訓練をしたわけではない。馬に乗れるのだからお前も乗れるだろう。」

「ふむ。では試してみるか。」
「うはwwwwwwww巡回wwww終ったwwww終ったwwwww」

「む、ご苦労だった、内藤。」
「おkkkkkk」

「丁度良い。お前も来い、内藤。」
「っうぇ?」

「これからペコペコに乗れるか試しに行くのだ。」
「おkkkkk俺wwww乗り物マスターwwwww」

「では行こうか。」
 ・
 ・
 ・

「クエーッ」
「さて、この者達がお前に乗るが・・暴れるなよ?」
「クエッ」

「ふむ、懐いているな。」
「まぁな。」

ふふん。と自慢げな騎士子たん。

「では俺から・・・ハッ!」
「クエッ!!」

「ふむ。やはり大人しい。乗りやすい良いペコペコだな。」
「まぁな。」
鼻高々な騎士子たん。

「では次は内藤だな。」
「おkkkkkkk」

「1wwww2www3wwwっうぇ!」
「クェァーッ!!」

「うはwwwww頭打ったwwwww痛いwwwww痛いwwwww」
後頭部を強打し、ごろごろと転げまわる内藤。笑みは絶やさない。

「内藤は無理か。では俺か騎士子たんだな。」
「最初はお前が行け。」

「まぁそう言うな。順番はコレで決めよう。」
「コイン?」

「うむ。骸骨が裏。蜘蛛が・・ゲフゲフ・・剣が表だ。」
「それならよかろう。それと、交代の周期はどうするのだ?」

「周期か・・2週交代でどうだ?」
「うむ。」
「では・・・・・」

「表!」
「裏。」

「・・・裏だな。」
「クッ」

「では行ってこい騎士子たん。何、ちゃんと交代するからな。安心しろ。」
「ぬぅ・・・」
 ・
 ・
 ・
「何か聞いてたより深淵の沸き少なくねぇ?」
「だねー」

「いいんじゃない?結構楽だし。」
「ま、そうだな。」

「ぉ、あそこに道行くソロの騎士子たんが!」

「おおう。ソロか・・強いのか?」
「だろうなぁ」

「おぉ!こっちに来るぞ!・・こんにちわ!」
「ちわー」
「こんにちわー」
「こんに『ブランディッシュスピアー!!』

「ギャアアアア」
「やっべやっべ超イテェ!」
「つーかPK!?PKですか!?」
「ここはPvじゃNEEEEE!!」
「うわぁ!は、はやく逃げろ!!」
 ・
 ・
 ・

「つぅー・・何なんだよ今の・・」
「思いっきり斬りかかってきたぞ・・」

「な、なぁ・・まさかさぁ・・」
「なんだよ。」

「あれが噂の受肉した深淵の騎士じゃあ・・」
「( ゜Д゜)アーン?お前そんなの信じてんのかよ。」
「で、でもさぁ。よく見たら傍らにカーリッツいたし、剣なのにBDSしてきたし・・」

「マジで?」
「マジ。本気と書いてマジ!でも俺はWiz!」

「「「ガクガク((((゜Д゜;))))ブルブル」」」

また一つ。騎士団の噂が増えましたとさ。

























「クェァー!!」
「うはwwwww痛いwwww痛いwwwww」

「なぜ乗れんのだ、内藤・・・」
「騎乗スキルに問題があるのか?」
「しかしなぁ・・」

「そういえばwwww俺wwwwライディングwwwwとってないwwwwwっうぇ」

「・・・・・・」
「・・・・・・」

「うはwww修正されるねwwwwww」







[abys001.lzh] 初利用wwwうはwwwおkwww 5kB 2004/07/04(Sun)15:39


↓ まずはここをご一読ください。
ttp://rosite.ujp.biz/
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「……お帰りなさいませ」
「ああ。何はともあれ、エルニウムの目処も付いたし…ん、どうした、カーリッツ」

 上機嫌の騎士の顔が微かに曇る。
 留守を任せていたカーリッツバーグの顔が曇っていたからである。

「まさか、イリューが…」
「わらわが何か?」
「うわぁあ!?」

 常になくはしたない大声を上げてしまい、狼狽する騎士娘を面白そうに見ながら、
 イリューは肩に担いだモノを軽くゆする。

「騎士殿には感謝の言葉も無い。この借りは、いずれ」
「…いや、その。今日の巡回を代わって頂けた事で十分…」

「そうか? もちつもたれつ。スレの最初の頃は要らぬ諍いもあったが、
 お主とは仲良くやれそうじゃの。では…わらわはこれで」

 肩の上のモノに騎士娘が何ともいえぬ目を向ける中、イリューは修道院へと去っていく。

「…た…たすけ…」
 何か、聞こえたような気がしたが、
 騎士娘はあえて聞こえなかったことにしてカーリッツの方に再度向き直る。

「…で、何があったのだ。留守中に何かあったのなら、私の責。聞かせてくれぬか?」
「…はっ。実は…」

「と、いうことでな、深淵」
「我々がいない間に、どこかの人間が我々のカードを手に入れたと話していたって?」
「うむ。Wisとやらをアリスが傍受したらしい。しかしその時の当直は全員…」
「人間の街に行ってた筈だよな…じゃあ、そのカードは…」

 この場にいない、もう一名の顔を思い浮かべて
 待機所内で顔を見合わせる二人の後ろの戸が、騒々しく開いた。

「今ここにwww西京の深淵こと俺様後…」
「「おまえかぁっ」」

----

「いきなりwwwMPKwwwごめwww通報www」
 問答無用の素手BdSでひっくり返り、それでも逆毛語でなにやら言っている内藤を、
 騎士娘が不穏な表情を浮かべながら見下ろす。

「冤罪なら申し訳ないのだが、内藤殿。
 もしかして先日は、GHに行く臨時に行かれたのではないのか?」
「うはwwwおkwwwおkwww」

「やはりか…何を考えているのだ、内藤殿! 
 仲間を手にかけて資金を稼ぐなという申し合わせを忘れたわけではあるまい!」
「ごめwww」

「あまつさえ、騎士の誇りたるカードを二束三文で人間に売り渡したのではなかろうな?」
「嘘www討ってネイwwwマジでwwっうぇ」

「じゃあ、見せてみろ。手放していないならば見せられるだろう!?」
「うはwww無理wwwサポシwww」

 騎士娘の肩がぶるぶる震えているのを見て、
 これからの事を想像した深淵が内藤のほうを少しだけ痛ましそうな目で見た。

 息の詰まる一瞬の後、鎧を軋ませて騎士娘が立ち上がり、立てかけてあった大剣を手に取る。

「お、おい…それはいくらなんでも。レイド兄弟ならいざ知らず、俺達は修理って訳には…」
「ごめwwwマジ勘弁wwwボスケテwww」
 慌てたように床を這う内藤を一瞥すると、騎士娘は踵を返した。

「……情けない。行くぞ、カーリッツ…巡検の時間だ」
「はっ」

 騎士娘の憤りを存分に叩きつけられた待機所の扉は、
 グラストヘイム1000年の歴史の重みを感じさせる耐久力で、その一撃を雄雄しく耐えた。
 顔をしかめ両手で耳を抑えていた深淵が、やれやれといった表情で内藤に語りかける。

「内藤。あまりきしこたんをからかうな。訳アリなんだろうから聞かんけどな?」
「ありwww」


----
〜一ヶ月後〜

「ありゃ、今日も内藤はいないのか? 
 最近、あいつさぼり気味だな…。女でもできたかね?」
「……あんな奴のことなど知ったことか。また人間の街に出向いているのだろう」

「じゃあ、きしこたんと二人か」
「…そうだな。では、私は右翼を受け持つぞ」

 いつもの突込みが受けられずに
 なんとなく拍子抜けしたような気分の深淵を残して、騎士娘は騎士団の階段を降りていく。

「いかんな…こりゃ。こういうのは俺の役じゃないんだけどな…」
 ため息を一つつきながら、深淵も彼女の後を追った。

「お下がりを…この者ども、強うございま…うぉっ!?」

 がらんごろん

 …奮戦むなしく、女プリーストのターンアンデッドを受けたカーリッツが崩れ落ちる。
 不死の存在である彼等は滅びこそしないが、再生まで戦線復帰は難しい。


「…いい気になるな、人間! 今日の私は機嫌が悪いぞ!」
 騎士娘と正面から渡り合っているのは、男商人だった。
 戦闘向けではないはずのその男は、
 頭に血の上った騎士娘のBdSの間合いを見切って強打を入れてくる。

「メェェェェェ(Ф_ゝФ)マァァァァァナイッッ!!!!」
「…くっ…」

 衝撃で両手剣が跳ね飛び、巨馬ごと騎士娘の体が壁に叩きつけられる。
 恐ろしく重い一撃に目がくらんだ隙に素早い連続攻撃が繰り出され、
 騎士娘は己の思い違いを後悔した。

「…強い。私は…ここまでなのか?」
 深淵が追いついたのは、その時だった。


「おいおい。廃一次職かよ…。そっちが二人なら、俺も混ぜてくれん?」
「もう一匹wwwwww」
 女プリーストがどこかで聞いたような口調で警告を発すると、商人も同じ口調で返す。

「うはwwww無理wwwww鰤dでwwwww」
「おkkkwwww(テレポート !! どしゅぅ〜ん)」
 しかし、羽類を持っていなかったのか、商人は踏みとどまった。
 戦闘力を喪失した騎士娘に背を向け、深淵に向かって構える。

「…勝てる、と思っているようではないな。だが悪いが…」
 商人の背後に見える、力なく壁に寄りかかったままの騎士娘を一瞥して、
 深淵は両手剣の柄を握りなおした。

「こっちも手加減はできん。悪く思うなよ!」
(フッまた深淵相手に散るのか・・・なんか・・懐かしい・・・)

 商人が何かを呟くのを見ながら、深淵は大剣を振りかざす。
 十分に速度と体重の乗った一撃を、商人は避けようとはしなかった。

 だが、その剣が彼に届くことは無く。
 黄色いオーラをまとった騎士が、深淵の渾身の一撃を受け止めていた。


「君wwwww平気かいwwwww」

「…なっ内藤!? 貴様…」
「ちっ…何がなにやら!」
 よろめきながら剣を構えようとする騎士娘に深淵は走りより、
 そのまますくい上げると跳躍する。

 剣を背に戻して駆ける深淵は隙だらけのはずだっが、
 商人は何かに愕然としたかのように棒立ちで、手出ししようとはしなかった。

----

「…あれはやはり…」
「内藤だな」

「……どうして」
「さぁな。ほれくえ」
 器用にリンゴなどむきながら、深淵は騎士娘に適当に相槌を打っている。
 本当ならばカーリッツの役回りなのだろうが、
 忠実な老従者は主人よりも傷が深かったため、魔界に帰っているのだ。

「あやつは、人間の方が良くなったのか?」
「さてな」

「…アビス姉さまのように、もう…戻ってはこないのだろうか」
 ぽつり、と騎士娘が口にした名前に深淵の手がわずかに止まるが、
 すぐにまた、しゃりしゃりと音を立て始める。

「懐かしい名前だな。元気にしているらしいが」
「姉さまは、幸せを掴んで出て行ったのだからいい。だが、内藤は…」

「俺達深淵の騎士は受肉するものもあればしないものもある
 …まぁ鏡を見ればそれが起きてるってのは分かるし、
 そういうものなんだろうと思ってるから俺は原因なんか気にしたことはないが」
「……」

「受肉した騎士には個性が出る。
 内藤はその中でも極端だったからな…、居心地が悪かったかもしれん。
 俺は嫌いじゃなかったけどな」

 深淵は皮のむかれたリンゴが溢れんばかりに積みあがった皿に、
 新しい一つを慎重に載せた。

「…私が内藤を追い詰めたのか?」

「そうじゃない。あいつにはあいつなりの理由があって俺達に剣を向けたんだろう。
 その理由は俺にはわからん。わかってるのは、あいつが仲間だってことだけだ」

 究極のバランスで積まれたリンゴの塔を、芸術家の目で眺めて満足げにうなずく深淵。

「私とて…わかっている。
 あいつがおかしくなったのはエルニウムを手に入れるために街に出てから…、
 カードを手放してまで力を尽くしてくれたのに。私は…」

「みんなわかってるさ。お前さんが嬉しくても悲しくてもBdSな暴力娘なのはな」
「…なっ!?」

 扉の向こうでも何かががしゃがしゃと音を立てたが、騎士娘の耳には入らなかったようだ。

「とりあえず、お前さんが戻るまでシフトは俺一人だ。
 …血騎士候にシフト変更願なんか出す気は無いからな。
 さっさとそれを食って元気をつけて戻ってこいよ」

 シーツをぎゅっと握る騎士娘の手を、深淵は軽くぽん、と叩くとイスを立つ。
 最後に深淵が振り返って見た騎士娘は、巨大なリンゴの塔を自信なさげに眺めていた。


----

「…イリュー殿。内藤について伺いたいのだが」

 いつになく真面目な顔で修道院に乗り込んできた深淵の前に、
 イリューはなぜか人間のアコライトの姿で現れた。

「早かったな。わらわの思っていたよりも」
「どういう意味だ。それに…その姿」
 それには答えず、イリューはカタコンベへと歩き出す。

「その格好では目立つからの。わらわのように擬態するがいいぞ」
「……」

 釈然としないものの、
 何かを知っているようなイリューに反論することもせず、深淵は人間の形に転じる。

 カタコンベの死霊や司祭達が道を空けるのに軽く頷きを返しながら、
 イリューは中央へと向かい、脇にそれ…、一つの墓の前で立ち止まった。

「……これは?」


        [内藤 ここに眠る]


「あの者はここに強い念を抱いて眠っていた。
 何か遣り残したことがあったのに、衝動に任せて真の滅びを迎えた事を悔いる、強い念をな」

「…真の滅び?」
「きゃらでりと言うらしい。唯一人の友人に裏切られたことに希望を失ったのだそうだ」

 イリューは、父親を扱う時にはついぞ見せたことの無いような優しい手つきで墓の表面をなでる。

「…だが、内藤はここに眠る間に気づいたらしい。
 その友人も、裏切ったことで傷ついているとな。
 だから…その友に、最後に一言かけたいと思った。その念が受肉に繋がったのじゃ」

「………」

「お主が来た訳はわかっておる。わらわにも目があり耳があるからの。
 騎士娘殿にはまた、恨まれるだろうがな…。
 わらわはこうなるだろうとわかって内藤をおぬし達に預けたのじゃ」

 寂しげな表情で笑うと、イリューはくるりと振り返り、
 墓に向かって人間がするように手を合わせた。

「想いは晴れたのであろ…。内藤よ、安らかに眠…」
「冗談じゃねぇぞ!?」

 がん、と深淵が墓に拳を叩きつける。
 驚いたようなイリューにはかまわず、そのまま墓に向かってまくし立てる。

「おー…痛ぇ…。いいか、気が晴れたら殴られに戻って来い」
「……ふふ」
 あっけにとられていたイリューが、楽しそうな笑みを見せる。
「騎士団はいいところじゃな。…騎士娘殿が羨ましいぞ」

「…騎士団は、じゃない。古城はいいところ、なんだぜ?」
「…違いない。内藤よ、先の発言は取り消そう。戻ってまいれ。わらわも待っているほどに」

----
〜数日後〜
「…で、今までどこをほっつき歩いていた?」

 騎士団の階段で、騎士娘に出会った内藤は、しばらく言葉を捜すように黙っていたが…、
 結局口から出たのはこれだった。

「色々www」
「……まあいい。ではいくぞ」

「無理wwwサポシwww俺様、職務放棄www修正wwwされるね」
 内藤はゆっくりと騎士団からカタコンベに向かう通路を歩き出す。

「それは問題ないぜ。俺ときしこたんと、2Fのジョーカー姉さんで穴埋めしてあるからな」
 深淵の声に彼の歩みが止まった。だが、振り返りはせずに、背中を向けたまま。

「今日はwww最後の挨拶wwwもうwww引退wwwおkwwwww」
「…また逃げるのか? 人間の時のように」

「うはwwwなんでwww氏ってるwww」
「事情がどうとかそんなことはいい。お前も騎士なら逃げるんじゃねぇ。
 一度受肉して俺達の仲間になったんだったら、墓場に逃げ帰るなんざ許さねぇからな」

「wwwっうぇうぇうぇえええ」

 騎士娘の肩を叩くと、微かに面白そうな光を瞳に浮かべた深淵が耳元で囁く。
(ほれ、帰ってきたらあれで迎えてやるっていっただろ?)
(本気でやるのか!?)

「行くぞ、…うほっ いい深淵!」
「…うぅ…ええい。私も騎士だ…。いいか、内藤! 一度しか言わぬぞ!」
「そこまで気張るほどのことか?」

「……巡回 や ら な い か ?」
 恥ずかしそうに、ちょっとそっぽを向きながら言う騎士娘の声に、
 内藤は篭手で目元を拭うと振りかえり、言った。

「うはwwwwwおkwwwおkwwおkwwwwっうぇ!!11!1!」






[abys011.lzh] うはwww逆毛スレの兄弟用添付www修正www 2004/07/15(Thu)18:44

 逆毛スレにリンクを頂いたようなので、深淵の騎士娘スレ住人じゃない方用にキャラ紹介汁! 
 漏れ様www優しすぎwww修正wwwヨロwww

 出てこないのも混ざってるのはご愛嬌。


 深淵の騎士

 深淵の騎士娘スレには、
 一部の深淵の騎士に強い念を残した存在が宿ることがあると言う設定があり、
 それを受肉といい表している。

 深淵の騎士娘
  きしこたん、騎士子、騎士娘などと言われる深淵の騎士。
  おとものカリッツ爺と共にグラストヘイムを守護する。
  真面目で堅物でからかい甲斐のありそうな女の子。
  人間の萌え頭装備に興味津々だが、恥ずかしいので秘密。

 深淵の内藤
  内藤語を喋り、2HQやらBBを使う深淵の騎士。
  実はいい奴だったり 実はかっこよかったり わざと道化を演じていたりする。
  カリッツと別れて単体で行動している内藤は、
  ジョーカー様にサポートしてもらったりもするらしい。

 深淵の騎士
  お兄さんっぽい騎士。やれやれ、とかいいながらみなの尻拭いをしたりする。
  お供のカリッツはお姉さんカリッツらしい。


 ダークイリュージョン
 
 ダークロードの娘。
 駄目パパが人間界に行っているときはアコライト姿で連れ戻しに行ったりする。胸が無い。
 深淵の騎士娘とはライバルかつ友達風味?


 ----↑拙作登場はここまで


 ダークロード
 
 魔界の貴公子らしいけど、暇さえあればカタコンベを抜け出して
 臨時広場で女アコプリ募集チャットを立てていたりするナンパ親父。
 以前オカマプリ+年増プリに迫られて以来トラウマらしい


 血騎士侯

 ブラッディナイトのこと。
 グラストヘイムを統括する血騎士にも、幾パターンかの受肉者がおり、
 血騎士子とか、ブラッディ内藤などの姿が確認されている。


 イビルドルイド

 古城の赤の司祭。実は独自の萌え路線を追求し、百合趣味も入っている危ないお方。
 騎士娘に萌え頭装備を提供したりする。


 ぺこぺこ
 
 古城に迷い込んだはぐれペコ。騎士娘にひきとられる。ドルさまもご執心。


 アリス

 いわずとしれた古城のアイドル。深淵の騎士娘のお世話やき。胸は騎士子よりでかいらしい。


 レイドリック兄弟

 流石な兄弟と似ている。
 お互いを剣の、弓の、と呼び合う萌えの求道者で、
 騎士娘たんに新しい頭装備をつけさせたりしてそれを隠れ見て喜ぶ。
 なお、毎回騎士娘たんにばれてブラッディスピアの刑。


 れいどりっく姉妹

 上の兄弟の妹らしい。女の子っぽい女の子で、萌え頭装備をいろいろするのは好き。
 アリスと一緒に騎士娘の部屋に押しかけることが多い。
 剣の方のれいどりっくはミストルテインを抱き枕にする趣味があるらしい。






[abys002.lzh] ごめwwwwwww全然まとまってないwwwww 5kB 2004/07/12(Mon)10:07

「内藤!内藤はどこだ!」


次の騎士団巡回は内藤の番なのに、一向に姿を見せないので、
はしたないとは分かっていてもついつい声を張り上げてしまう。

先日の急に失踪してはひょっこり戻ってきた件といい、
あいつの行動といったらまるで掴めない。全く、何をしているのやら。

受肉したばかりとは言え、あいつには深淵の騎士としての自覚がないのだろうか。

今日こそがつんと言ってやらなければならない。
しかし、私の心の奥底で「またどこかに行ってしまうかもしれない」という
漠然とした不安が、いつもそれを押しとどめる。

きつく叱らなくては、という思いと、甘やかしてはいけない、という思いが
葛藤を生み、結果としてなし崩しのまま終わってしまう。

「世話の焼ける奴だ・・・」

私は誰に言うでもなく呟いた。
何だか、出来の悪い弟に悩む姉のような気分だった。


「内藤なら休暇を取ってどこかに出かけた」
我々の駐屯地兼休憩所である騎士団の円卓。

私と同じく受肉した深淵の騎士の男に、内藤の行方を尋ねるとそんな答えが返ってきた。
そんなことも知らなかったのか、と言わんばかりの口調である。

「休暇、だと。そんな余裕がどこにあるんだ」
また失踪してしまったのでは、と心配した分、つい荒げるように男を責めてしまった。

「俺が代わりに引き受けた」
男は平然と答える。

「大事な用があるらしい。だから巡回の代わりを引き受けた。文句はないだろう」
「お前がいいならそれで構わないのだが・・・」
大事な用・・・。一体何だろうか?

思わず眉を顰めると、それを見透かしたように男は言った。
「詳しくは知らないが、人間の世界で何かすることがあるらしい」
「人間の世界?そんなの私は聞いてないぞ!」

激昂して円卓を叩く。恐らくアリスが気を利かせたて飾ったのであろう、
卓上の花瓶が倒れそうになるのを男がさっと掴んで防ぐ。

「なんだ、きしこたんらしくないな。内藤が何をしようと勝手じゃないか。
 それともあれか?私は知らないのにあんただけ知ってるとは何事だ、みたいなジェラシーか?」
「馬鹿、そんなものではない!」

図星を突かれたのを大声で隠す。尤も、この男は鋭いから全て見抜いているだろうが。
嫉妬、確かにそうかもしれない。

内藤が騎士団に配属されて以来、私達は行動を共にしてきた。
言わば、同朋であり仲間である。

にも拘らず、私に黙っていくとは水臭いではないか。
せめて一言残してくれれば余計な心配などしなくて済んだものを。

「単に巡回の代わりが欲しかったから言っただけだろう。それ以上でもそれ以下でもないと思う。
 変な勘繰りをすると精神衛生上よろしくないぞ。お肌が荒れる」
「それでも・・・私は伝えて欲しかった」

「おいおい、そんな悲しそうな顔をするなよ。
 確かにアイツは風来坊みたいなところがある。
 でもな、風来坊は必ず帰ってくるもんだと相場が決まってるんだ」

果たしてそうだろうか。
内藤の受肉した経緯をダークイリュージョン卿に聞いて以来、
どうにも内藤の存在が儚げに見えて仕方がない。

ちょっと風が吹いただけで すぐに崩れてしまう砂の城のような脆さと危うさを連想してしまうのだ。
「きしこたんは過保護なんだな」
男が微苦笑する。

「確かに内藤は向こうの世界に未練が強いらしいしな」
向こうの世界。人間の世界。故郷。

友人に裏切られた世界。それでもなお希望を残している世界。
あいつはそこで何をしているのか。何をしたいのか。

目を瞑って考える。

私には向こうの世界の記憶は残っていない。
この古城が私の故郷だ。故郷を守るために戦っている。
だが、内藤にとってはどうだろうか。

かつての記憶が色濃く残っている以上、内藤の故郷は人間の世界にある。
だとしたら、ここは内藤にとっては過ごしにくい場所なのかもしれない。

故郷。
帰るべき場所。
内藤はこちら側と向こう側、どちらを選ぶのだろうか。

そう思ったら居ても立ってもいられなくなった。
椅子を蹴飛ばすように立ち上がり、私は男に問う。

「内藤がどこに行ったか分かるか?」
「確かイズルートに行くと行っていたが、どうした」

「少し確かめたいことがあってな。ちょっと出かけてくる」
「ん。分かった。今日は血騎士候も居なくて厳しいが何とかする。行って来い」

「すまんな。借りは必ず返す」
「萌え頭装備のSSでいいz」
「ブランディッシュスピアー!!」



「今wwwwww個々にwwwwwwww
 斉www凶のwwww俺達wwwww交隣www1!!!!!1」

「うはwwwwww集まり杉wっうぇwww修正されるねwwwっうぇwwww」
「おkwwwwおkwwwwww」

「俺らwwwww西京wっうぇwwwwwwごめwwwww
 ミスwwwwトレスcヘルムに挿しちゃったwwwwっうぇww」


イズルート剣士ギルド前、剣が交差した形の建物の前は溢れるばかりの騎士達で埋め尽くされていた。
しかも彼らは皆、内藤のように不協和音を連想させる独特の口調で語り合っている。

なんとも奇妙な光景だった。
行き交う人々は露骨に目を伏せて歩いていく。


「おかーさーん、なんであのひとたちおかしいのー?」
「しっ!見ちゃいけません!!」

騎士達を指差して眺める子供とそれを嗜める親が目の前を通り過ぎた。

ふと自分も同類に思われているのではないか、と恐れ、木の陰に身を隠した。
これでは変装のためにドルイド神官に借りてきたサングラスも怪しさを増すだけだろう。
サングラスを外してポケットにしまい、騎士達の中に内藤がいないかどうか探してみた。


「うはwwwwwwwきしこたんwwwっうぇwww
 どうしてwwwwwここにwwwwいるのwwwww?・??・??」

ぽん、と背中を叩かれ、思わず飛び上がった。


振り返って見てみると、そこには内藤が頭上にクエスチョンマークを浮かべて私を見ている。

「な、内藤!」
「さてはwwwwwwきしこたんもwwww
 祭りにwwwwwww参加するのwwっうぇwwっうぇw???・??」

「祭り?祭りとは何だ?」
「騎士のみんなでwwwwwwワイワイ騒ぐwwwwwwwwそれがwwww祭りwwww
 前からwwwww計画してたwwwっうぇwww俺様wwww勤勉過ぎwwっうぇww」

それでよく姿を消していたのか。


「職務放棄してwwwwwwwごめwwwっうぇwww
 でもwwwwどうしてもwwwwwやりたかったwwwっうぇ」

内藤の締まりのない笑顔の中に、どこか真剣なものが込められていた。


「なんでだ?その祭りとやらは、騎士団の職務より優先されるものなのか?」

内藤は少し口ごもって考えていたようだが、結局いつものように笑ってごまかそうとする。


「wwwww秘密wwwwっうぇww口だとwwww説明できないwwwwwww」
「職務を休んでまでやりたかったんだろう?それほどまでに大事なことだったんだろう?
 お前が何をしたいのか、教えて欲しい」

「じゃあwwwwwwきしこたんもwwwww参加してみるといいwwwwwww」
「構わないのか?私は深淵の騎士だぞ。彼らが受け入れてくれるとは思わないが・・・」

ちら、と騎士の集団を見る。もし正体がばれたら大変なことになるだろう。


「だwいwじwょwうwぶwwwwwww騎士ならwwwww誰でも参加できるwwwwwwwww
 それにwwwwww
 人間のwwwww格好をしたwwwwwきしこたんならばれないwwwwwwww」

内藤が何を考えているのか知りたかった。
だから、私は頷いた。


「・・・わかった。参加してみよう」
「うはwwwwwwwおkkkkkwwwwおkkkkkkwwwwwwww
 でもwwwwww一つwwwwwwルールがあるwwっうぇwwwww」
「ルール?どんなルールだ?」

耳元で、内緒話をするように囁く内藤。

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
理解するのにだいぶ時間を必要とした。
と同時に顔が紅潮する。

「な!?なんでそんなことをこの私が!?」
「それがwwwwww絶対のルールwwwwwww
 修正されないねwwwwwっうぇww^^^^^^^^^;;;;;;;;;」

「く・・・わかった、やればいいんだろうっ!」
こうなったらもうやけくそだ。



みんなwwwwwwwww
みwなwぎwっwてwるwかwいwwwwっうぇwwwwww!!!11!!!!!」

「っうぇっうぇっうぇっうぇっうぇっ
 うぇっうぇっうぇっうぇっうぇっうぇっうぇ!!!!1111!!!11」


準備された舞台に、内藤がひらりとマントをなびかせて登場すると、
待ち焦がれた騎士達がいっせいに歓喜の雄たけびをあげた。

私は舞台の袖からそれを眺めている。


「うはwwwwwwwww主催者wwwwwwやっと北wwwwwwww
 遅杉wwwwwwwwごめwwwwwミス^^^^^^;;;;;;;」
「ゲストwwwwwww連れてきたからwwwwっうぇwwww勘弁してwwwwっうぇwwww」
「下らねぇwwwwwwゲストだったらwwwwww
 暴輪愚罰手がwwww火を吹くぜwwwっうぇwwwww」

「それではwwwwww登場wwwwwっうぇww!!!!!!11!!1!
 深淵のwwwww内藤子さんwwwww!!!!1!!1!!」

くそ。どうしてもやらなければならないのか。
内藤は挑発するような目で私を見ている。

やると宣言した手前、今更言い逃れは出来ない。
仕方ない。深淵の騎士に二言はないのだ。
私は覚悟を決めて舞台に飛び出して、一度深呼吸するとこう叫んだ。

「今vここにvvv祭協のvvvvあたしことvvvcvv
 深v淵vのv内v藤v子vvvvv高燐っvvvvvvbvvv!!!1!!!!
 みvなvぎvっvてvきvたvわvぁvvvv><><><><><v!!!!11!!!」

観衆の興奮がびりびりと肌を通して伝わってくる。
・・・何か、大切なものを失った気がしてならない。


「うほっwwwwwwいいwwww内藤子たんwwwwwww
 やwwwwらwwwwwなwwwwwいwwwwwかwwwww」

観客席の一番前に座っていた騎士が下卑た視線で私を見た。
ふるふると拳が震える。ただでさえ恥をさらしているのに、これ以上恥の上塗りをしてたまるものか。

気が付くと私は腰の大剣を振り回していた。


「部蘭泥朱槍でvvvvvv
 ぶっ殺しvvvvvちゃうぞっvvvvvv><><><><><おんぴう」
「うはwwwwww剣でBdswwwwww升erwwwwww
 痛杉wwwwwボスケテwwwボスケテwwwww!!!11!!???」

八つ当たりも含まれていた分威力も倍増していたのだろう、騎士は塵のように吹き飛んで行った。
被害になった騎士には気の毒だが、これで会場の空気が沸騰し、場は急に盛り上がる。
ざわめきの中、内藤は剣を高く掲げて言った。


「今wwwwwここにwwwww
 サタデーwwwww内藤wwwwwフィーバーwwwwwww開幕wwww!!!!!!111!」

「「「「「「「「っうぇぇぇぇぇぇぇぇぇいwwwwwwwww!111!!!!」」」」」」」

「みwなwぎwっwてwいwくwぜwwwwww!!!!1!!!1!」

「「「「「「「「っうぇぇぇぇぇぇぇぇぇいwwwwwwwww!!!1!!!!」」」」」」」


祭りの喧騒の中、切り離された空間のように静まっている舞台裏。
私は見覚えのある逆毛頭がぽつんと一人佇んでいるのを見つけた。


「こんなところにいたのか、内藤」
「あれwwwwwwwきしこたんはwwwwww
 祭りはいいのwwwwwwっうぇっうぇ^^^^^^^^;;;;;」

「これ以上あんな口調で喋りたくないし、聞いてるとおかしくなりそうだからな。
 とっとと抜け出してきた」
「うはwwwwww手厳しいwwwwww」

私は内藤のとなりに腰掛ける。


「ところで・・・お前は祭りの主催者だろう?参加しなくていいのか?」
「いいwwwwwww俺はwwwww見てるだけでwwwwww充分wwwっうぇ」

「なぜだ?」
「俺はwwwww人間じゃないからwwwwwっうぇwww」

心臓を冷たい手で握り締められたような気がした。

魔にもなりきれず、人にもなりきれず、中途半端な存在。


「じゃあ・・・なんで・・・」
「多分wwwwwwイリューたんからwwwww聞いたとwwwww思うけどwwwwww
 俺はwwww親友に裏切られたwwwwっうぇwwwww
 すごくwwwwww悲しかったwwwwww

 だからwwwwww一度はwwwww存在をなくしたwwwwwwけどwwwww
 よく考えたらwwwwそれもwwwww
 親友への裏切りだったwwwwwww自分勝手な行為だったwwwっうぇ
 かっとしてやったwwww今ではwww反省しているwwwっうぇwwっうぇ

 あいつにwwwww謝りたくってwwっうぇwwこの世に戻ってきたらwwwwwwww
 深淵の騎士にwwwwwwなってたwwっうぇwwwww

 深淵の騎士にはwww
 強い思い出がwwwwwあるからwwwwwかもしれないwwっうぇっうぇっうぇ」

内藤の目から雫が零れた。
笑い声に段々嗚咽が交じっていく。


「この身体じゃ・・・謝りたくても・・・っうぇ・・・謝れない・・・っうぇ
 あいつに・・・嫌な・・・思いをさせるから・・・っうぇっうぇっうぇ・・・
 もう・・・俺はっうぇ・・・あいつに・・・謝れない・・・っうぇっうぇっうぇっうぇ・・・」

かける言葉が見付からなかった。


「これは・・・多分・・・自分勝手な事をした罰・・・っうぇ・・・
 ずっと・・・背負っていかなければ・・・ならない・・・っうぇっうぇ
 分かってはいるけど・・・つらすぎ・・・っうぇ・・・修正して欲しい・・・」

「・・・」

それでも内藤は、顔面から水分という水分を垂れ流しながら続ける。
黙って見ているしかできない自分がなんと無力なことか、思い知らされた。


「こんな・・・思いは・・・他の人には・・・して・・・欲しくないから・・・
 祭りを開いて・・・っうぇ・・・みんなに仲良くなって・・・欲しくなった・・・wwwww」

気が付くと私の頬も涙で濡れていた。


「全く、お前は馬鹿だ。大馬鹿だ。
 傷ついて、かばって、そしてまた傷ついて。
 それでもなお、他人のために動こうと言うのか」
「それが・・・w騎士のw・・・w役目だからwwwwwっうぇ」

ぐしょぐしょで醜い顔のはずなのに、内藤の顔は晴れがましく輝いて見えた。


「内藤・・・お前ってやつは・・・」

「うはwwwww主催者消えたと思ったらwwww内藤子さんとしけこんでるwwwっうぇwww
 しかも泣かせてるwwwっうぇwww罪作りwwっうぇwww」

出し抜けに現れた騎士の男が私たちに向けて言った。


「うはwwwwwwちがwwwwww」

顔を篭手で乱暴に拭って、内藤は虚勢を張る。


「主催者もwwwww早く来いよwwwwwwみんな待ってるwwwwwwww
 一緒にwwwwwwwwやwらwなwいwかwwwwwwwwwww」

騎士の誘いに、内藤はしばらく考えて。
こう答えた。


「うはwwwwwwwwいい考えwwwwwwwwおkwwwwwwwおkwwwwwww」